川口納骨堂 八聖殿 Kawaguchi Noukotsudo-Hasshoden

住職よりごあいさつ

人々が、自然と集まる場所になってほしい。

 ここ10年ほどで、お墓を取り巻く環境はずいぶん変わりました。「お墓は持たない」と考える方が多くなり、無縁になってしまうお墓も増えてきたのです。そのような状況に危機感を抱いたことが、今回の納骨堂建立の最も大きなきっかけです。お墓を持つことに抵抗がある方も、亡くなった方の供養をしっかりしたいという考えはもちろんお持ちですから、時代の変化に順応していかねばならないのは、私たちの側なのですね。
 八聖殿は、なによりもお参りする人の身になってつくられていることが優れた点だと思います。たとえば全体の基調となっている美しい黒もそうですし、お堂を囲む水盤や境内の植栽なども、訪れる人の心を落ち着かせることでしょう。お参りする時間そのものを好きになってもらいたい。「行かなきゃ」という義務感ではなく、「行きたい」と思って足を運んでほしいからです。
  “home”というコンセプトの通り、お寺というのは訪れる人をいつでも「おかえり」と迎え入れてくれるものです。そして、お参りする人の思いはまさしく「ただいま」なのですね。私自身、本堂に入るときには心の中で自然と「ただいま」と言っていることに気付きました。納骨堂もそうですが、龍泉寺そのものが人々にとっての“home”になれればと思います。
 現代の人々にとってお寺は、法事などの用事があるときにしか訪れない、少し特別な場所なのではないでしょうか。そうではなくて、昔のように子供たちが遊び回っていたり、大人が息抜きに訪れたりと、自然と人が集まる場所になってほしい。
 当寺院は真言宗ですが、宗派や思想にしばられたくはありません。考え方が違っても、人と人とが顔を合わせて付き合えば理解し合えると信じていますし、垣根を取り払って「縁」を広げていくことが大切だと考えています。納骨堂建立をきっかけに、より多くの方と出会い、永くお付き合いさせていただければ幸いです。

住職氏名 直林一敏